まず、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲から始めましょう。
実は私、ベートーヴェンという作曲家があまり得意ではありません。彼の音楽は、なんか、いろんなものに逆らいながら乗り越えながら流れていくような、そういう印象を受けることが多いです。私はこう言うのを聴くと、気持ちが疲れてしまうんですよね。だから、いい曲だということは分かっていつつ、手を伸ばすのが億劫になる。そういう類の音楽です。弦楽四重奏曲も例外ではありません。弦楽四重奏の名曲ということは重々分かっているのだけど、あまりに堂々としすぎていて、気が重くなってしまいます。そんなわけで、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の全集を揃えるときも、なるべく清楚な感じのするコンパクトな演奏を選びました。フェルメール弦楽四重奏団のものです。でも、これも結構お蔵入り状態です。
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そんなときに出てきたのが、今回ご紹介したいエンデリオン四重奏団(Endellion String Quartet)によるベートーヴェン弦楽四重奏曲・弦楽五重奏曲全集です。これも渡辺和さんのブログで知ったものですが、iTunes Storeで試聴して、これは!と思い、購入しました。期待通り、いや、期待以上のアルバムでした。
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今までベートーヴェンの弦楽四重奏曲に感じていた、音の重さが一切ないんです。極めて澄み切った、軽やかな音が流れ続けます。特に初期の作品18なんかは、ハイドンやモーツァルトの曲だと言っても信じてしまいそうです。ロマン派の出発点ではなく、古典派の延長として位置づけられる音楽になっています。
最も、この音の清澄さは解釈や演奏技術の問題だけではないようです。渡辺和さんのブログにもある通り、イギリスの音楽学者Jonathan Del Marによる改訂版を使っているのですね。というか、エンデリオン四重奏団と共同作業を行った成果ということで、これが録音という形で初めて世に出てきたアルバムになります。改訂の骨子は例えばこのへんの記事が参考になりそうです(英語ですが)。
ベートーヴェンの音楽は力強くなくては、と考える方には合わないかなあ、と思いますが、一方、私みたいにベートーヴェンの重さが辛かった方には、文句なくお薦めできます。それに、下世話な話ですが、とにかく安いんですよ。CDだと7,000円弱(弦楽五重奏曲も全部入ってですよ!)、iTunes Storeのダウンロード販売だとなんと2,600円です。正直、こんなにいい演奏がこんな金額で本当にいいの? と思ってしまいます。

