「合唱の部屋」(chorusroom.org)管理人の国島丈生が、合唱の話題を中心に、クラシック音楽全般について書き綴っています。ダウンロード販売など、インターネットとクラシック音楽が関わる話を中心にしています。
2010年10月29日金曜日
弦楽四重奏にはまってます
最初にクラシック音楽を聴き始めたのは中学生の頃だったと記憶しています。そのときは、ご多分に漏れず、主に聞いていたのは管弦楽曲、とりわけ交響曲でした。それがいつの頃からか、管弦楽は音が多すぎる、厚すぎると感じ始め、より音の少なくて薄い室内楽へ好みが移っていきました。ちょうど、ルネッサンスの合唱曲を聴き始めた頃、そして少人数の声楽アンサンブルで歌うことに興味が移っていった頃と一致しているように覚えています。
その頃から弦楽四重奏曲には興味がありました。声と似た楽器ばかりがアンサンブルをするのですから、声楽アンサンブルと同じように面白いはず。そう考えていたのだと思います。でも、もう一つ馴染み切れなかった。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲はその最たるもので、重々しいばかりで、何がいいのか、全然分かりませんでした。で、結局、ほとんど聴かないまま、最近まで(実に20年近く!)過ごしてきました。
変化のきっかけになったのは、インターネットラジオでした。普段からまめにチェックしているBBC Radio 3とSveriges Radio P2、いずれも、割と頻繁に弦楽四重奏曲がかかるのです。タダでいろいろ聴けるんだし、まあちょっと聴いてみるか。そう思って、マメに録音してはiTunesに放り込んでiPodで聴く、そういう作業を続けているうち、いろんなことが分かってきて、俄然面白くなってきた。という次第です。
結果として、インターネットラジオから入っていったのは正解だったようです。というのは、どうやら次のような事情があるらしいのです。(やくぺん先生、こと、渡辺和さんのブログでずいぶん勉強させていただきました)
要するに、ここ20年くらいの間に演奏技術が非常に進歩しているらしい。これは実に納得できる話で、実際、インターネットラジオでかかる若手の弦楽四重奏団の演奏を聴いていると、どの団もアンサンブルの精度がすこぶる高い。弦の音が重なって透明な響きが出せるのはアタリマエで、その上で、音色や表現をどうするか、というレベルになっているように感じています。音の立ち上がりの精度もすごく高い。これに慣れた上で昔の演奏を聴くと、響きが濁ってるし、なんか、4本の弦楽器がバラバラに演奏しているようにも聴こえてしまいます。この辺り、タリス・スコラーズの登場以来、アンサンブルの精度が桁違いに向上した古楽系声楽アンサンブルと話がとてもよく似ています。
弦が重なって音が溶け合うなんて普通なんとちゃうの?と思うと、さにあらず。どうやら、楽譜に書いてある音の通り出していたのではダメで、音を微妙に調整しないと響きが溶け合わないらしい。多分、合唱と同じで、音色やピッチの調整が必要なんでしょう。これがアタリマエのようにできるのがアタリマエになっている。という状況のようです。
もう一つ、CDなどの形であまり出てこない弦楽四重奏団に、いい演奏をしている団体がすごく多い。特に若手の弦楽四重奏団は、どれを聴いても、またライブでも、かなりの水準の演奏をしているように思います。でも、弦楽四重奏というジャンルはクラシックの中でもマイナーな部類に属しますから、商業ベースではなかなかペイしない。結果として、本拠地周辺での演奏活動が主で、たまに海外で演奏したり、たまにCDを出したり、と、そんな活動をしている団が増えているらしい。インターネットラジオを通して、こういう団(の一部でしかないわけですが)に触れることができたのが、全く幸運でした。
実は、インターネットラジオで弦楽四重奏を聴き始める際、演奏の取捨選択の尺度を一つ決めてました。それが、若手の団を中心にすること。最近だと、どの団もたいていホームページを持ってますから、それを見て、演奏家が若そうな団を選んで聴いていたのです。ほら、合唱コンクールでも、一般Aグループ(32人以下)に突如として若手のすごい団体が出てくる、ということがよくあるじゃないですか。若いが故に、高い瞬発力と精度を兼ね備えた演奏ができてしまうことがある。それとおんなじじゃないかなあ、と、漠然と考えていたのです。まさに、そうだったのだ、と、思っています。(もう一つ、女性が入っている団を優先する、という尺度もあったのですが、これは、まあ、単にビジュアルの問題ですね、はい。)
聴いてるうちに、これは!と思うようなアルバムにも何枚か出会えました。今後、その辺も紹介していきたいと思っています。
2010年10月9日土曜日
Ericsonの「地上の平和」が素晴らしい件
シェーンベルク(Arnold Schönberg)の合唱曲に「地上の平和」(Friede auf Erden)というのがあります。このブログをお読みになる方ならたいていご存知の曲ではないかと思うのですが、さて、皆さんはこの曲、お好きでしょうか。
私が「地上の平和、好きですか?」と聞かれたら、口ごもりそうな気がします。いや、名曲であることは疑いないですし、クライマックスの部分はとても好きですよ。でも、口ごもるだろうなあ。というのは、クライマックスに至るまでの長い部分がなんだかよく分からないんですね。まるで、最後の1分間のクライマックスのために、その前の8分間を辛抱しているような感じです。
ところが、そんな私の常識を打ち破ってくれる演奏を聴くことができました。やってくれたのはEric Ericson。Eric Ericson Chamber Choirを率いた名演を集めたアルバム「Treasures」、その最後に収められた「地上の平和」の演奏です。
このコンビの演奏ですから、合唱団の技術的には申し分なく、澄んだハーモニーを聴かせてくれます。でも、なにより驚かされるのは、最初の一音から、音に必然性が感じられることです。音楽の構成が素晴らしい。この感覚が、クライマックスに至るまでの8分間、ずっと続きます。これは、本当に驚くべきことです。
私は、この演奏を聴いて、初めて「地上の平和を歌ってみたいなあ」と思いましたよ。まあ、実力的に可能かどうかは置いておくとして、こう思わせてくれるほど魅力ある演奏だった、ということです。
Ericsonの「地上の平和」というと、すぐに、ストックホルム放送合唱団を率いた有名な録音が思い出されますが、今回聴きくらべた感じでは、「Treasures」のほうがいいと感じました。他団を含めても、抜きん出た演奏だと思います。
Eric Ericson & Eric Ericson Chamber Choir. "Treasures"
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