2010年2月25日木曜日

2月の新譜: Bach: Motets (Bach Collegium Japan)

続けて、2月の注目新譜をもう一つ紹介します。バッハ・コレギウム・ジャパンによる、バッハのモテット集です。一言でいうと「やっときたか!」、そんな感じです。

Motets
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Masaaki Suzuki, Bach Collegium Japan Chorus & Bach Collegium Japan - Bach, J.S.: Motets

日本で一番うまい合唱団を挙げるとしたら、私は、バッハ・コレギウム・ジャパンを挙げるでしょう。日本で「うまい」と評価できる合唱団はいくつかありますが、たいていは、ヨーロッパの超一流合唱団と演奏を並べて聴くと、見劣りしてしまいます。明らかに差があるんですよね。そんな中で、バッハ・コレギウム・ジャパンだけは、全く遜色を感じません。私も合唱をやっていますから、これがどんなにすごいことか、よけいに強く感じます。

鈴木雅明氏の音楽自体も、たぶん性に合っているのだと思います。鈴木氏の弾く平均律クラヴィーア曲集は、チェンバロを使ったものとしては、最もすっと耳に入ってくる演奏でした。愛聴盤の一つです。

そんなにお気に入りのバッハ・コレギウム・ジャパンなのですが、個人的に一つ困ったことがありまして…私、どうにも、管弦楽付きの合唱というものにほとんど関心がないのです。バッハも例外ではなく、カンタータはもちろんのこと、受難曲、ロ短調ミサでさえ、積極的に聴く気になれません。合唱の響きに管弦楽が混じる時点で、基本的にダメなのです。ちなみにモツレクや第九もそうですので、我ながら実に徹底していると思うのですが…そんなわけで、せっかくのバッハ・コレギウム・ジャパンも、これまで聴きたいものがとても限られていて、悲しい思いをしてきました。最初に「やっときたか!」と書いた気持ちが、これで分かっていただけますでしょうか。

バッハのモテットは、超有名曲でありながら、なかなか名演の録音がない合唱曲の一つです。これまでの私の決定盤は、リアス室内合唱団のものでした。合唱団は超一流ですし、ルネ・ヤーコプスの指揮ということで、バッハらしい演奏が聴けるということで、申し分なしです。これと聴き比べをしてみました。

バッハ:モテット集
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ルーベンス(ジビッラ) リアス室内合唱団 キール(マリア・クリスティーナ) フィンク(ベルナルダ) コーイ(ペーター) テュルク(ゲルト)
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音楽の作りとしては、リアス室内合唱団の演奏がきびきびしているのに対し、バッハ・コレギウム・ジャパンのほうはしなやかに流れていくような感じです。合唱団の響きは、リアス室内合唱団はいかにも合唱団らしいのに対し、バッハ・コレギウム・ジャパンのほうは声楽アンサンブルといった感じで、個人の声がよく見えつつ、響きの調和は崩れていません。リアス室内合唱団はいわゆる合唱的、バッハ・コレギウム・ジャパンは古楽的な演奏といえるでしょうか。どちらも捨て難い(別に捨てなくてもいいんですが…)。

私にとっては、バッハのモテットの決定盤2枚目、その日の気分によって聞き分けるということになりそうです。


2010年2月22日月曜日

2月の新譜: Stile Antico "Media Vita"

2月は合唱に注目すべき新譜が2枚も出てきて、とても楽しませてもらいました。2回に分けて感想を書いてみたいと思います。

Media Vita (Hybr)

1枚目は、以前にも紹介したイギリスの新進気鋭の声楽アンサンブル、Stile Anticoの4枚目のアルバム、Media VitaStile Antico - Sheppard: Media Vitaです。デビューアルバムを出したのが2007年で、その後、年に1枚のペースでアルバムをレコーディングしていることになります。

これまでのアルバムと違い、"Media Vita" は1人の作曲家の作品だけを集めた、かなり明確なコンセプトに基づくアルバムです。取り上げた作曲家はジョン・シェパードJohn Sheppard)。チューダー朝の頃の作曲家ですね。Stile Anticoの公式ページにある解説文を見ると、彼らがこの作曲家を高く評価していることが伺えます。それにしても、タリスやバードをさしおいて、まずシェパードでこういうアルバムを企画したところが興味深いです。

シェパードというと、彼らと同系列の声楽アンサンブル、タリス・スコラーズもシェパードの作品をいろいろ録音しています。今回のアルバムのタイトルにもなっている Media Vita もそうです。

The Essential Tallis ScholarsThe Essential Tallis Scholars
Peter Phillips & The Tallis Scholars - The Essential Tallis Scholars

聴き比べてみると、アンサンブルのカラーの違いが分かって、おもしろいです。タリス・スコラーズが時として鋭角的な響きに傾きがちなのに対し、Stile Antico は穏やかで、どことなく牧歌的な雰囲気が漂う瞬間もあります。この傾向は、男声のみで歌われる3曲目の I Give You a New Commandment で特に顕著であるように感じました。シェパードという作曲家の解釈の違いなのかとも思ったのですが、これまでのアルバムにも穏やかな雰囲気を感じましたので、アンサンブルのカラーなんでしょうね。

いずれもアンサンブルの技量は非常に高く、甲乙付け難いです。聴くときの気分によって、どちらがいいかは変わってくるのかな、と思いました。