2009年6月21日日曜日

「クラシック音楽作品名辞典」第3版、発売

クラシック音楽作品名辞典 第3版
井上 和男
三省堂
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「クラシック音楽作品名辞典」の第3版が先日発売されました。早速購入して使っています。

これ、クラシック音楽作品についての諸データを作曲家ごとにまとめた辞典です。諸データとは具体的に何かというと、作品名の原題、日本語訳、作曲年、初演地、編成などです。組曲の場合は、その構成曲についても原題と日本語訳などが掲載されていることもあります。初版が1981年に出版されて以来、1996年に第2版、そして今回の第3版に至っています。

もちろん、編者自身がまえがきで述べている通り、全ての作曲家の全作品をただ並べるというのはあまりに膨大です。そこで、編者の経験に基づき、作曲家と作品を絞り込んで掲載しています。第3版では、作曲家数1243、作品数が約45200曲となっています。

この辞典で最も重宝しているのは、作品の原題が収録されている点です。いずれ記事を書こうと思っていますけど、クラシック音楽の場合、CDなどに書かれている作品名がまちまちであることが多く、例えばiTunesで音楽ライブラリを管理するときに不便になることがあります。その際に、この辞典は、作品名に関して一つの標準形を提供してくれるのです。Web検索をうまく行えばかなり良質の資料が入手できるようにはなっていますが、これだけの資料が卓上に置けるコンパクトな形でまとまっているというのは、依然として貴重です。

ですが、版を重ねた現在でも不満がないわけではありません。編者の経験に基づいて絞り込んだ結果が自分にとって妥当か、もっとひらたく言えば、自分の探したい曲がちゃんと収録されているか、という点です。多分これは、どれほど版を重ねても100%解決されることはないでしょう。ですから、以下で述べるのは、個別の曲が収録されているか、というよりは、編集の方針に対する不満ということになります。

一つ目は、他のジャンルの曲に比べ、合唱曲の扱いがやや軽んじられている点です。例えば、プーランク(Francis Poulenc)を見てみましょう。「7つの歌」(7 Chansons)や「小さな声」(Petites voix)、「悔悟節のための4つのモテット」(4 Motets pour un temps de pénitence)、「クリスマスの4つのモテット」(4 Motets pour le temps de Noël)は、構成曲の原題も収録されています。ところが「人間の顔」(Figure Humaine)や「アッシジの聖フランチェスコの4つの小さな祈り」(4 petites prières de Saint François d'Assie)は、構成曲の原題が省略されています。合唱愛好者としては、かなり理解に苦しむ基準です。「人間の顔」はカンタータと題されているので、バッハのカンタータの構成曲の原題が省略されているのと同様の扱いを受けたのかもしれませんが、それにしても。余談ですが、実はこれが、cpdb.chorusroom.org というサイトを作った動機の一つだったりします。

二つ目は、日本の作曲家がすべて省略されている点です。これはとても痛い。というか、その基準はおかしいでしょう、と言いたくなります。編者は第2版のまえがきで「外国人と同等の基準で選ぶとすれば、明治以来150名の作曲家が必要となり、本辞典の一隅に収めるにはふさわしくないと判断した」と書いていますが、言い訳になっていないよなあ、と思います。この点は将来の版でぜひとも改善してもらいたいです。

ところで、第3版のオビには「現代の作曲家を中心に新たに40名を追加」とありますが、まえがきを読むと、この代償として38名の作曲家を削除したようです。というわけで、第3版を購入しても、旧版は捨てられない、ということになりますね。

2009年6月20日土曜日

ブログ名を「Chorusroom Journal」に変えました

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、しばらく前から、本ブログの名前を「chorusroom管理者日記」から「Chorusroom Journal」に変えています。

このブログを開設したのが2006年の末ですので、ここを始めてからかれこれ2年半がたちました。その間、細々とではありますがずっと更新を続けてきまして、気がつくと、「合唱の部屋」の中で最も更新頻度の高いページになっています。こういう顔の見える文章を書き連ねてみたかったんだなあ、と改めて思います。

取り上げる内容も、それなりに他のブログと違う色が出せているかなあ、とも思っています。

合唱やクラシック音楽に関するブログは日頃からたくさん読ませていただいてまして、演奏会やCDの感想を楽しく拝見しています。そういうブログを見るにつけ、自分はこういうふうには書けないなあ、と思います。根が感激屋ではないので、感想の言葉がどうも分析的で簡潔になってしまうんです。「合唱の部屋」が長らくリンクやコンクール結果といった客観的データを中心にしていたのは、こういう自分の特性が分かっていたので、どういう文章が自分に書けるのか見えていなかった、という面もあったのです。

でも、こうやってブログを書き連ねていく間に、国内外のクラシック音楽ニュースをピックアップして掘り下げていくというスタイルが今の自分には合っていて、しかもあまり他の方がやっていないスタイルであるということに気がついてきました。テッサ・ボナーの訃報をいち早く紹介した(私の記事に反応されたと思われるブログ記事をいくつも拝見しました)のが、その典型だったように思います。

こうなってくると、もう「日記」じゃないな、と思い、「ジャーナル」なんていうちょっとえらそうな名前を付けてみることにしました。書く内容のスタンスは今までとは変わらないつもりです。ただし、内容はクラシック音楽まで広げることにしました。これは、最近合唱に限らずクラシックを聴くことが増えてきて、関心のアンテナが合唱にとどまらずもう少し広がり始めたので、クラシックくらいまで内容を広げてもいいかなあ、と思うようになったためです。

今後もレビュー系とは違うスタンスでぼちぼち書いていきたいと思っています。よろしければ今後ともおつきあいください。

2009年6月19日金曜日

2009年度京都賞の受賞者決定

2009年度の京都賞の受賞者が決定しました…と言っても、知らない人には「なんのこっちゃ?」と思われるでしょうね。

京都賞というのは、稲森財団が主催する国際賞です。もちろん、京セラの稲森和夫さんが関わっています。稲森財団のページからちょっと引用してみましょう。
京都賞は、科学や文明の発展、また人類の精神的深化・高揚に著しく貢献した方々の功績を讃える国際賞です。毎年、先端技術部門、基礎科学部門、思想・芸術部門の各部門に1賞、計3賞が贈られます。
私の本職は情報科学分野の大学教員なので、京都賞というと、情報科学分野の大物が表彰される賞という印象が強いのですが、実はそれだけではありません。思想・芸術部門では、音楽、美術、映画・演劇、思想・倫理といった分野で大きな功績のあった人が選ばれています。この4分野から毎年交代で選ばれており、今年は音楽部門から選ばれる年に当たっていました。

これまでの受賞者はこんな感じです。
  • 1985年:オリヴィエ・メシアン
  • 1989年:ジョン・ケージ
  • 1993年:ヴィトルト・ルトスワフスキ
  • 1997年:イアニス・クセナキス
  • 2001年:ジェルジ・リゲティ
  • 2005年:ニコラウス・アーノンクール
確かに20世紀を代表する音楽家が名前を連ねているように思います。個人的にはルトスワフスキが少々意外で、それなら武満徹を入れてくれよ、とか思ったりもしますが、まあそれはさておき。

で、今年はどうなったのでしょうか。公式ページから引用します。
ピエール・ブーレーズ (Pierre Boulez)
「作曲・指揮・著述・組織運営を通して時代を牽引し続けてきた音楽家」
作曲家として、セリー音楽の推進から電子音響技術の活用まで、常に革新的な作品を通じて現代音楽界に大きな足跡を残すとともに、指揮・著述・組織運営にわたる広範な活動を展開。そのいずれにおいても刺激的な創造性に富んだ多大な影響力を発揮して、第二次大戦後の西洋音楽界をリードし続けてきた。
ということで、ブーレーズが受賞したということです。プレスリリースを読んでいきますと、広範囲に渡って先進的な活動をしてきたことが主に評価されたようで、単に名指揮者、あるいは作曲家としての評価ではないようです。情報科学分野でも、単なる素晴らしい業績というよりは、広範囲の分野に極めて大きな影響を与えた人がこれまで受賞していますので、この評価尺度なら納得できるところです。

京都賞の授賞式は11月頃に京都の国際会議場で行われています。ブーレーズは現在80歳を越えていますが、これに合わせて来日することになるのでしょう。もしかしたら、今回の来日が生ブーレーズの見納めになってしまうのでしょうかねえ。

2009年6月11日木曜日

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールのストリーミング配信

辻井伸行さん、マスコミでの報道が増えて一種フィーバー状態になってますね。CDの売上も好調なようですし(というか、これを書いている時点で、アマゾンの音楽部門全体で売上2位ですよ)、iTunes Storeでも「debut」が全部門アルバムチャートの7位にランクインしてます。クラシックとしては稀に見る盛り上がりです。

さて、ここでは辻井さんそのものの話ではなく、辻井さんがグランプリを受賞したヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール(Van Cliburn International Piano Competition)について書いてみます。ピアノ演奏はレビューを書けるほど聴いているわけではないですし、そもそもレビューはあまり得意ではないので…

このコンクールでは、今年の予選、準決勝、決勝すべての演奏をWebcast、つまりWebでストリーミング配信しています。コンクールの演奏をストリーミング配信するというのは珍しいことではなく、全日本合唱コンクールでも過去に1度だけ全国大会をストリーミング配信したことがあるのですが、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールのWebcastは気合いの入れ方が半端じゃないです。

まず、実際に映像を見ていただくと分かる通り、複数台のカメラを使った本格的な映像を配信しています。後でDVDのような商用パッケージに転用しそうな水準です。

技術面からも気合いがうかがえます。映像配信にSilverlightを利用しているのです。SilverlightはMicrosoft社が開発したWebコンテンツ閲覧技術で、Windows以外の環境でも動作することから注目を集めているものです。日本でも、動画配信サービスGyaoがSilverlightを採用しています(報道記事)。私が注目したのは、Silverlightがかなり新しい技術であるという点で、YouTubeに採用されているFlash Videoよりも扱える技術者数が少なく、配信設備(ハードウェア、ソフトウェア)も最新のものを用意しなければなりません。つまり、それだけストリーミング配信に投資しているということです。

ここまで本気でストリーミング配信に取り組んでいるということは、単なるボランティア精神ではなく、何らかのビジネスモデルが裏にあるのかな、という気もします。少々うがち過ぎかもしれませんが。

ちなみに、クライバーン財団のページを見ると、過去のコンクールの演奏を閲覧するには有料会員になる必要があるようです。コンクールのページのURLに年号が入っていない(http://www.cliburn.tv)であることからも、いずれ、無料で今年度の演奏を聴くことはできなくなるように思われます。辻井さんの演奏を聴くなら、今のうちということですね。


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2009年6月10日水曜日

スウェーデン放送合唱団の武満徹「手づくり諺」

Sveriges Radio P2の放送をチェックする日々が続いています。かなり長い間この作業を続けているので、同じような曲を何度も耳にすることが増えているのですが、時々とんでもなく貴重な音源が出てきて仰天させられます。先日もそういう体験をしました。
Klassisk förmiddag - Torsdag 28 maj 2009 kl 10:03
Toru Takemitsu: Handmade proverbs (Shuzo Takiguchi i engelsk översättning av Kenneth Lyons). Radiokören. Dirigent: Stefan Sköld. Konsert 1991, Berwaldhallen. (6’44)
なんと、スウェーデン放送合唱団が武満徹の「手づくり諺」(Handmade Proverbs)を演奏した音源が放送されたのです。

武満徹の合唱曲はあまり多くありません。混声合唱のための「うた」全12曲、「風の馬」、「芝生」、そして「手づくり諺」。これだけです。演奏される回数についても、「うた」は頻繁に耳にしますが、「風の馬」は時々、「芝生」はごく稀、「手づくり諺」に至ってはほとんど演奏されていないのではないでしょうか。私も「手づくり諺」は今まで耳にする機会がありませんでした。武満徹全集CDに収録されているのは知っているのですが、おいそれと手を出せる値段ではないので、未購入なんです…

それが、あのスウェーデン放送合唱団の演奏で聴ける!いやー、久々に興奮しました。

「手作り諺」はキングスシンガーズの委嘱で作曲されたもので、もともとは男声六重唱です。それを、この音源では、カウンターテナーのパートをアルトが歌っています。そういう意味では、やや異端な演奏と言えるかもしれません。

演奏の出来自体は、さすがスウェーデン放送合唱団、の一言に尽きます。ハーモニーの純度が極めて高い合唱団なので、響きの色が微妙に変わっていく武満徹の音楽の魅力が充分に出ています。響きの凹凸の少なさ、滑らかさは、「うた」や「風の馬」の東京混声合唱団より上でしょうね。

Sveriges Radio P2 は本放送から1ヶ月間、WWW経由で放送を聴き直すことができます。上にリンクを張った番組ページから聴くことができますので、ご興味のある方は聴かれてみてはいかがでしょうか。今回の音源は2009年5月28日放送ですので、6月27日までは聴けるのではないかと思います。


SJ1041 武満徹:手づくり諺―四つのポップソング― 男声六重唱のための
武満 徹
日本ショット
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