「クラシック音楽作品名辞典」の第3版が先日発売されました。早速購入して使っています。
これ、クラシック音楽作品についての諸データを作曲家ごとにまとめた辞典です。諸データとは具体的に何かというと、作品名の原題、日本語訳、作曲年、初演地、編成などです。組曲の場合は、その構成曲についても原題と日本語訳などが掲載されていることもあります。初版が1981年に出版されて以来、1996年に第2版、そして今回の第3版に至っています。
もちろん、編者自身がまえがきで述べている通り、全ての作曲家の全作品をただ並べるというのはあまりに膨大です。そこで、編者の経験に基づき、作曲家と作品を絞り込んで掲載しています。第3版では、作曲家数1243、作品数が約45200曲となっています。
この辞典で最も重宝しているのは、作品の原題が収録されている点です。いずれ記事を書こうと思っていますけど、クラシック音楽の場合、CDなどに書かれている作品名がまちまちであることが多く、例えばiTunesで音楽ライブラリを管理するときに不便になることがあります。その際に、この辞典は、作品名に関して一つの標準形を提供してくれるのです。Web検索をうまく行えばかなり良質の資料が入手できるようにはなっていますが、これだけの資料が卓上に置けるコンパクトな形でまとまっているというのは、依然として貴重です。
ですが、版を重ねた現在でも不満がないわけではありません。編者の経験に基づいて絞り込んだ結果が自分にとって妥当か、もっとひらたく言えば、自分の探したい曲がちゃんと収録されているか、という点です。多分これは、どれほど版を重ねても100%解決されることはないでしょう。ですから、以下で述べるのは、個別の曲が収録されているか、というよりは、編集の方針に対する不満ということになります。
一つ目は、他のジャンルの曲に比べ、合唱曲の扱いがやや軽んじられている点です。例えば、プーランク(Francis Poulenc)を見てみましょう。「7つの歌」(7 Chansons)や「小さな声」(Petites voix)、「悔悟節のための4つのモテット」(4 Motets pour un temps de pénitence)、「クリスマスの4つのモテット」(4 Motets pour le temps de Noël)は、構成曲の原題も収録されています。ところが「人間の顔」(Figure Humaine)や「アッシジの聖フランチェスコの4つの小さな祈り」(4 petites prières de Saint François d'Assie)は、構成曲の原題が省略されています。合唱愛好者としては、かなり理解に苦しむ基準です。「人間の顔」はカンタータと題されているので、バッハのカンタータの構成曲の原題が省略されているのと同様の扱いを受けたのかもしれませんが、それにしても。余談ですが、実はこれが、cpdb.chorusroom.org というサイトを作った動機の一つだったりします。
二つ目は、日本の作曲家がすべて省略されている点です。これはとても痛い。というか、その基準はおかしいでしょう、と言いたくなります。編者は第2版のまえがきで「外国人と同等の基準で選ぶとすれば、明治以来150名の作曲家が必要となり、本辞典の一隅に収めるにはふさわしくないと判断した」と書いていますが、言い訳になっていないよなあ、と思います。この点は将来の版でぜひとも改善してもらいたいです。
ところで、第3版のオビには「現代の作曲家を中心に新たに40名を追加」とありますが、まえがきを読むと、この代償として38名の作曲家を削除したようです。というわけで、第3版を購入しても、旧版は捨てられない、ということになりますね。

